かもめCafe

大学で働くっておもしろい!?ヨココク若手職員が「大学職員の仕事」を紹介する大学非公式ブログです。

プレゼント

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広瀬さんは分かりやすい。思ってることが全部顔に出る。

何も言ってないけど、同意してないことは間違いない。

「かわいいと思うんだけどなあ」私は思わずつぶやいた。

学食で一緒にお昼を食べていた。広瀬さんは4月に入って

きた同じ部署の後輩だ。

彼女が返してきた私の携帯の画面には、ネコとタヌキの間の

ような見た目の、キャラクターの画像が映っている。

 

ゆるキャラってやつですよね。私、ちょっと分からないかも」

「そっかー、私もそういうの何でも好きって訳じゃないけど、

こいつの間抜けそうなところにかわいさを感じちゃうんだよね」

「へえ。でも全然いいと思います。同年代の男の人が好きとか

言ってたら、多分引いちゃうけど」

思わずお互い顔を見合わせて笑った。

私より3歳若い広瀬さんはちょっと冷たい印象を与えるショート

カットの美人という感じなのに、笑うと無邪気な子供の表情になる。

そんな子が同じ部署に配属されて、同性ながら私はすごくうれし

かったんだけど、実は気がかりなこともある。

 

彼女の容姿は、春から全学の特に若い職員の間で評判になっていた。

私の同期の横田君も、若手ではダントツでかわいいと言っていると

最近人づてに聞いた。

そして職場の誰にも言っていないが、横田君と私は3ヶ月前から

付き合っている。職場での恋愛は、こうやって余計な情報まで

入ってくるからやりづらい。

面と向かって彼に聞くのは気が引ける。嫉妬深い女だと思われ

たくなかったし、何より恥ずかしかった。

「あ。今週末、ホームカミングデーのお手伝い出勤だ」

広瀬さんが自分の携帯の画面を見ながら言った。

「そっか。じゃあ私も学祭の当番で出勤だ」

 

私が働く大学では大学祭とホームカミングデーが同じ日に

開催される。だから広瀬さんも私も休日出勤。別の部署の

横田君も出勤で、時間が合わないから夕食だけ一緒に食べ

ようと約束していた。

当日は良く晴れて、日差しが強かった。昼過ぎにはまるで

夏が戻ってきたような天気になって、模擬店でアイスとか

カキ氷が売ってたら買いたいくらいだったけど、残念ながら

私の出勤経路には見当たらなかった。

 

その代わり、私は見たくないものを見てしまった。

食堂の前で横田君と広瀬さんが立って話していた。

彼は朝から出勤して、もう仕事が終わってる時間だし

学祭の担当だから今日の広瀬さんと業務の接点はないはず

だった。

漠然と不安に思っていたことが現実になってしまったと

思った。2人に近づくこともできず、私は逃げるように

自分の職場へ向かった。

 

話をしてたことくらい、気にするようなことじゃないと

何度も自分に言い聞かせたが、胸騒ぎが収まらなかった。

どんな顔をして彼と会えばいいのかわからないまま夜に

なり、私は待ち合わせのパスタ屋さんへ向かった。

先に来ていた彼が「おつかれさま」と言って私に笑いかけて

来てくれたけど、ぎこちない笑顔しか返せなかった。

広瀬さんの可愛い笑顔が頭に浮かんだ。

 

「これ、あげる」

席に着いた私に彼が渡してきたのはウチワだった。そこに

プリントされていたのはよく見覚えのある、あのネコの

ようなタヌキのようなキャラクター。

「どうしたの、これ」

「今日、暑かったから配ってたみたい。夏の余りじゃないかな。

学内に乗り入れてるバス会社のキャラだもんね、これ。

広瀬さんが持って歩いてたから、頼んでもらっちゃった」

「え。こんなの欲しいって、変に思われなかった?」

「うん、引かれてたかもね。まあいいよ」

すごく大きな感情がこみ上げてきて、私は言葉に詰まった。

彼のことを見ることもできなかった。

「どうしたの。このキャラ好きじゃなかったっけ?」

私はようやく顔を上げ、泣きそうな笑顔で彼に言った。

「うん。大好き」

 

ウチワが配られるほど暑くはならなそうですが、今週末に

本学の学祭とホームカミングデーが開催されます。

理工学系大学院等総務係の久保田でした。

 

常盤祭

http://www.ynu.ac.jp/hus/sien/16776/detail.html

ホームカミングデー

http://homecoming.ynu.ac.jp/